2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

No.526 魚嫌い!

魚が跳ねたような天気で あたり一面が磯臭くてたまらなかった 彼はしかめ面 頭の中はぼやけたまま 立たなきゃ乗れない電車を待った 立川駅には人が多かった 誰もやることがないのに 人が多かった 彼はその人の多さに耐えながら 人の中に紛れ込んで隠れていた…

No.525 (題名思いつかなかった)

無精髭をそのままにして ぽりぽりと掻いたりして 退屈な時間を ぼうっと過ごして 誰かやって来ないかと待っていた 誰もいない街の中 勝手に持って来たチョコレートを むしゃむしゃ食べて 変わらない空の色を見ていた モノクロに少し色が付いたような世界は …

No.522 剥がす男!

彼がふと時計に目をやると 左手の手首が少しめくれていた 気持ちが悪いので 少しずつ剥がしてみることにした (表面にあった皮膚が 何かの拍子に浮かび上がったのだろうか?) 剥がし続けると左手の形に すぽっと抜けて 彼は驚いた 二分後 彼はまた時計に目…

No.521 詩について考えてみたら 言い訳が生まれた

僕が一番身近に見てきて 実際に体感して 詳しくなり 描けるものは 人間の怠惰な側面なのだろうと思った そして これから先もそういう詩を書くだろう 希望や夢があるからこそ 現実との差から逃げる手段を選ばざるを得ない 努力という言葉を否定して 自分の怠…

No.520 蝿を叩け!

早朝の雨が降っていた あたりには灰色の膜が張っているようだった 彼は透明な傘を家に忘れて来た 迎えの車に走って乗り込んだ 車は パチンコ屋の駐車場で止まった まだ人も車も少なかった 広い駐車場の目の前には 工場のような建物があり 音が聞こえた その…

No.519 ハッピーな男

彼はとても幸福だった いつも小指をぶつけても ゴミ箱を漁って 二年前の肉を食い 腹を壊して病院へ行き 余計に金がかかっても 午前三時にいつも来る 隣のハゲオヤジの愚痴を聞いていても 電車の中で女に足を踏まれ 痴漢に間違われ 連行されても 刑務所で一番…

No.518 孤独に寄り添う彼

彼はきっと 君の見ている世界を良く知っている そして今も 夜空の片隅で 一人っきりで 君の見ている世界を眺めながら 紅茶を飲んで ゆっくりと息を吸って 吐いている 彼はきっと 君の知らないことも知っている そして君も 彼のことを知っているかも知れない …

No.517 古い平屋に住んでいた彼!

彼は古い平屋に住んでいた 当時 築七十年以上のボロ屋だ 所々 隙間風が吹くほどガタがきていて ムカデなどの虫がよく入り込んで来た 庭には 誰も手を触れない庭があり 伸び切った草が腰の高さまで成長していた 夏に三十センチほどのミミズが現れて 彼は気味…

No.516 記憶の幼虫

強く打った頭が悲鳴を上げた 彼の記憶は シェイクされて耳から流れ出た 何も残されていないと思っていたが ポケットの中にあった財布に身分証があった その身分証を確認すると 他の自分の情報を集めようとした このままでは今居る森の中から抜け出しても 我…

No.515 ジョウと彼女と大きな猫

巨大な塔のように聳える一匹の猫が居て ジョウは家に帰ることが出来なかった 街は封鎖されて 猫が寝返りを打つたびに 高層ビルや 小さな家々が潰される音を聞いた ジョウの恋人が その街に取り残されていて そんな人々が まだ何百人も居て ジョウは この猫が…

No.514 無題

早朝 少し開いたカーテンの隙間から 曇っているはずなのに 青い光が射し 彼の目を焼くので 結局 彼は眠れなかった 時間は残酷に擦り減っていった 枕が合わないのか 頭に血が上るのか または それの反対の原因があるのか 眠ろうとしても 頭が冴えてしまい 彼…

No.513 罪深い詩人

彼は 100%のグレープジュースと煙草を2箱買いに行ったコンビニには ウイルス防止のために「マスクを着用ください」と書いてあった 部屋にマスクを忘れてしまったのでコンビニの涼しい空気を感じながら少し引け目を感じつつ愛想の良い店員からトレイで釣りを…

No.512 水平線男!

砂浜と海の間に立って 彼は水平線を眺めていた 小さな船が見えて その上を海鳥が飛んでいた 朝から夕方までそうして 夜になると同時に家に帰ったら ゴミだらけの部屋には 彼が座る場所がなかった 家でゆったりと過ごす時も 彼は水平線を探すように立っていた…

No.511 左に傾き過ぎた男!

傾いた彼が左へ曲がる 景色は反対の方向に傾く 真っ直ぐになろうとしても 左半身が重くなる 傾いた彼が さらに左へと進む 大きな円を描くように 進んでゆく 横断歩道では 不思議そうに指を刺され それを横目に どんどん曲がる 曲がり続けて 重くなり続けて …