2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

No.425

微笑んだ横顔に 落ちてゆく水の跡 降り注ぐ雨の中 夕暮れも落ちてゆく 通じ合う言葉でも 仕草でもないものに 名前など欲しくない 曖昧なものばかり 足掻いても騒いでも 手に入れて失った こぼれ落ち流れ着き 疲れ果て壊れかけ 微笑んで細くなる まぶたには煌…

No.424 そして彼も欠片になった

指先からこぼれ落ちた 数少ない夢の欠片優しすぎる思い出には 蓋をして目を閉じた愛する者は皆去った 彼には彼だけが残った身に付けた洋服にさえも 彼は忘れられた ゆっくりと回る夜の幻想は街灯とこぼれる家々の明かり彼は目を奪われて蝶を追うように夜を彷…

No423 僕と俺と私と彼

数えきれない後悔 そんなもののために 僕と 俺と 私は 彼にアレを売ってしまった それは永遠に続く たった一度の過ち 僕は 何も出来ない現実を 俺は 破壊へと向かう衝動を 私は 理性を揺さぶる誘惑を 「殺す」ために 彼に金にもならないものを売ってしまった…

No422 背中が痒い男

彼は無性に背中が痒くなった 掻き毟りすぎてヒリヒリとした 彼にはまだ見えていなかったが 背中にはある模様が出来上がっていた 痒み止めを塗ってみたが 痒みは増すばかりで治らない 血が出ても痒みは続き とうとう彼は家から出られなくなった 仕事をしてい…

No.421 彼の完璧な一日

レストラン ステーキをナイフで切る音 微かに聞こえる食洗機の音 ドリンクバーのコーラが出る音 彼は注文した 何から何まで完璧な午後 目の前に彼女が座っていたら…と 考えてはみたものの 少し切なくなった 後ろで騒ぐミニカーの無邪気な声 何故かヒソヒソと…

No.420 リハビリ

詩人に苦悩はつきものだと誰かが言った 誰が言ったかは忘れた 嘘かも知れない 夢だったのかも まあそれは問題ではない 問題なのは 詩への情熱は幻想であることだ 彼が今まで書いて来たものは何だったのか そもそも何故詩を書き始めたのか 全て無駄なことかも…

No.419

昨夜のしがらみを彼は忘れた 女の泣き声は昨夜に取り残された 鉤爪の跡が心を蝕んでゆく 彼は今日のしがらみに囚われた 朝日は魂を燃やした 腑抜けになった彼は酒を飲んだ 一つ一つ並べた空き瓶が部屋を埋め尽くすまで それほど時間はかからないだろう 彼は…