2020-04-12から1日間の記事一覧

No422 背中が痒い男

彼は無性に背中が痒くなった 掻き毟りすぎてヒリヒリとした 彼にはまだ見えていなかったが 背中にはある模様が出来上がっていた 痒み止めを塗ってみたが 痒みは増すばかりで治らない 血が出ても痒みは続き とうとう彼は家から出られなくなった 仕事をしてい…

No.421 彼の完璧な一日

レストラン ステーキをナイフで切る音 微かに聞こえる食洗機の音 ドリンクバーのコーラが出る音 彼は注文した 何から何まで完璧な午後 目の前に彼女が座っていたら…と 考えてはみたものの 少し切なくなった 後ろで騒ぐミニカーの無邪気な声 何故かヒソヒソと…

No.420 リハビリ

詩人に苦悩はつきものだと誰かが言った 誰が言ったかは忘れた 嘘かも知れない 夢だったのかも まあそれは問題ではない 問題なのは 詩への情熱は幻想であることだ 彼が今まで書いて来たものは何だったのか そもそも何故詩を書き始めたのか 全て無駄なことかも…

No.419

昨夜のしがらみを彼は忘れた 女の泣き声は昨夜に取り残された 鉤爪の跡が心を蝕んでゆく 彼は今日のしがらみに囚われた 朝日は魂を燃やした 腑抜けになった彼は酒を飲んだ 一つ一つ並べた空き瓶が部屋を埋め尽くすまで それほど時間はかからないだろう 彼は…