No423 僕と俺と私と彼
数えきれない後悔
そんなもののために 僕と 俺と 私は
彼にアレを売ってしまった
それは永遠に続く たった一度の過ち
僕は 何も出来ない現実を
俺は 破壊へと向かう衝動を
私は 理性を揺さぶる誘惑を
「殺す」ために 彼に金にもならないものを売ってしまった
すると彼がこう言った
「これはあなたにとって得なことじゃないですか?」
僕も 俺も 私も 納得がいかなかった
損得で測れないものこそがアレなのだと思った
日に日に萎れていくアレが 今も彼の手の中にある
僕は俺に 俺は私に 私は僕に 助けを求める
恥ずかしくて絵にも描けない
絵に描いたような三すくみ
彼は僕に 俺に 私に さようならと言った
滑稽なほどに遠ざかる まるでアリンコみたいに小さい
するとなんだか おかしくてたまらなくなった
彼は馬鹿げたことを成し遂げて 得意げな顔をして去っていった