No.358 虹色の銃口

 

 

銃口を咥えた像が 公園の真ん中に建っていた

男はそれを見ながら 煙草を吸っていた

季節外れの気温で茹だった脳みそは

像が揺れ動いていると彼に思わせた

 


敵はどこからともなく 音もなく やってきた

銃口を咥えた像を気ままに見続けることも出来ず

彼は膝の裏を蹴られて 全身の力が抜けて 倒れた

誰に蹴られたかは 重要なことではない

 


銃口を咥えた像が 虹色のオーラを纏って

古いアルバムのジャケットのようになった

彼は煙草の火を消して それを撮って また煙草を吸った

ベロのように出て来たポラロイドの写真も 虹色だった

 


また彼を蹴る者がいた 今度は腹に食らった

彼はうずくまって 咳き込んだ

しかし 像が銃口を咥え続けているように

彼も煙草を唇に挟んだまま 苦しんでいた

 


ようやく敵の気配が消えると 像がパキパキと鳴り出して

咥えていた銃口を 彼の方へと向けた

彼は大きく煙を吸って 思い切り吐きかけると

像に煙がかかり 虹色が辺りに広がった

 


彼はCDの真ん中のような穴を額に空けて仰向けに倒れた

その銃声は彼方まで飛んで どこかで消えた

彼の死体を見下していた像は

また銃口を咥えて 彼のような馬鹿が来るのを待っている