No.544 誰も彼のことなど気にしない

 

 

全ての人が加害者であり 被害者である

彼はそんな風に思って 他人と接した

傷つけたり傷ついたりしたいわけではない

彼はそんな奴なのだ そうとしか言えない

 


それから 彼は人生ゲームが好きだった

いつもパイロットを狙っているが

良くてアイドルで 殆どがバイトだった(結婚はしまくり 子沢山だ)

そのため 彼にとって人生ゲームを発明した奴も加害者だ

 


人生ゲームの被害者であるのに

何故彼はそれを続けたい理由は簡単だ

続けていれば いずれ億万長者になれる

誰よりも強い加害者になれるというわけだ

 


しかし 現実にはどうだろうか

人生ゲームでは 金を巻き上げたりもするので加害者かも知れない

生まれながらの大富豪は 加害者なのだろうか?

…なんていうことを 彼は考えたこともない

 


彼は持つ者は加害者であり

持たざる者は被害者だと決め付けていた

どちらかというと被害者で居たほうが

精神的には楽であった

 


なので 彼自身は被害者の顔で街を歩く

肩がぶつかりでもしたら大変だった

相手に慰謝料を請求することもあった

しかし それがまかり通ったことはなかった

 


彼も 心のどこかでわかってはいるのだろう

自分自身も 誰かにとっての加害者であるということを

しかし そもそも被害者と加害者という概念は

必要な時だけ使えば良いのだと 彼が理解する日は来ない

 


今日も 昨日からの被害を受けて

二日酔いで目を覚まして 顔を洗った

彼自身が望んで酔ったことは忘れている

飲みに誘った加害者たちを 心底恨んでいるだけだ