No.313
男は煙草を吸っていた
世の中に対する違和感を感じながら
彼はどこか遠く 違う星で生まれ
どこかで間違えて この醜い地球に来てしまった
全ては幻のように思えた
誰もが同じ顔に見えた
心の中を探り合うために
無数の触手が 彼にまで伸びた
彼は その触手を嫌った
ぬめぬめと べとべとと
彼を触ろうとする触手を
断ち切ろうともがいていた
その触手から逃れられず
醜い人間として 生きる他なく
相変わらず 変わらない顔でいがみ合う人々を
少し離れた場所から見る他無かった
彼に興味をそそられた女が
彼の部屋に訪れても
他人の話ばかりしていたし
その女も他と同じ顔で笑っていた
触手が彼に触れた時も
嫌悪感しか感じることが出来ず
どこか遠く 違う星に残したものを数えながら
くたばり損ないの彼は 煙草を吸っていた