No.500 詩を書かない男!
CDの回転する音が少しだけする
音楽はそれよりも大きな音で しかし大きすぎず
ちょうど良い部屋の温度と合うように調節し
キーボードを叩いて 何が詩なのだろうかと考えている
彼はベッドに横になりたかったし
煙草を吸いたかったし
炭酸の冷たいジュースを飲みたかったけれど
詩を選ぶだけの度胸は まだ残っていた
その度胸が コップの底にある一滴の水で
傾けて 誰かの喉の奥を潤すことになるまでは
彼の度胸が 乾いてしまわないように
彼は 音楽をかけ続けるのだろう
CDにかき混ぜられた空気は
そのコップに入る水になるらしい
他のやりたいことは全て後回しに出来るだろう
だからこそ 今は詩を書かなければならないのだろう
彼はふとそう思った
自分が今 本当は何をしているのかに気がついた時だ
彼は CDをケースから出してもいなかった
パソコンは 初めから持っていなかった
彼は 部屋の白い壁を
ただじっと眺めていただけだった
猛烈に喉が渇いているし 眠くなってきたので
コーラを飲んでから煙草を吸って ベッドに行こうと決めた