No.474 強い彼?

 

 

彼は煙草を吸っていた いつも同じような曲が流れる部屋の中で

時代遅れな方法で 色々な詩を書こうとしていた

彼の周りにいる人が何と言ったとしても それは無駄なことだった

彼はずっと ずっと 詩を書こうとし続けていた

 

 

煙る部屋の空気を入れ替えることもなく

空になったオレンジジュースを入れていたグラスに

再び冷蔵庫で冷やされているオレンジジュースを

注ぐこともなく 他にするべきことがあったとしても 書こうとし続けた

 

 

結局のところ 彼は詩を書くことが出来なかった

やはりと言うべきか 周りにいる人は 「彼は馬鹿だった」と言った

しかし ある一人の青年は「彼は強い! お前らは屑以下の汚い砂鉄だ!」と言った

それから続けた 「磁石は向こうにあるぞ! さっさと向こうへ付いていけ!」

 

 

彼は本当に強かったのだろうか?

青年は それを考えると 何故だか彼の部屋にあった時代遅れな方法で

何かを書きたくなり 実際にそうしてみた

しかし (やはり?) 青年にも詩なんて書けなかった

 

 

それでも 青年は書こうとし続けた

歳を取り 中年になり 彼が生きた歳月より ずっと生きても

書こうとし続け 書き損ない続けた

とうとう (やはり?) 詩は完成しなかった

 

しかし青年は 彼が何を考えていたのかわかった気がした

それだけで良かった 周りのことはもう見えなくなった

もう何もかも見えなくなってしまえば良いと思った

青年でなくなった青年は 彼と同じ音楽を聴きながら…