No.473 弱い彼!

 

 

 

傷付きやすい彼は気にしないようにすればするほど

気にしすぎてしまい さらに傷を増やしてゆく

被害妄想では説明が付かない誰かの本音を

まともに受け止めて いつまでも煮込んでいる

 

 

頭の中の鍋があると想像して欲しい

その鍋の中には誰かの言葉が入っている

煮出した汁は苦いのに それを捨てるところはない

彼の頭の中はいつも臭い湯気が充満する

 

 

彼が言っていた「信用したい」という言葉を

彼を傷つける誰かに伝えてくれる人はいない

勝手に価値を決めつけられて 低い場所に括り付けられ

爪先には冷たい波が押し寄せている

 

 

彼が海岸にいると想像して欲しい

手も足も頑丈な木に捕らえられている

逃げたくても逃げられない 助けが来ることはない

彼は絶望に叫ぶこともしなくなっていく

 

 

彼は些細なことに気が付いてしまうのに

誰かの発言に彼を委ねるほど 力を与えてしまう

どれほど巧妙に隠したとしても

含みのある言い方の奥にあるものを探り当ててしまう

 

 

彼が金塊を探していると想像して欲しい

しかしそこには 昔殺された何百もの死体しかない

掘り当てても何の感慨も湧かない

ただただそこに恐怖があるだけ それに怯えるだけ