No.435 弱虫

 

 

頭の隅で膝を抱える自分の姿に

見慣れてしまった彼は弱虫で

自分に鞭を打つように

自暴自棄に生活を続けていた

 


酒を片手にギャンブルをする

それが唯一の楽しみだった

彼は負けても別に良かった

酒が飲めるだけの金はあった

 


決まった仕事に就かないので

人間関係での悩みはない

他人よりも自分に鞭を打つ

一番恨むのは過去の夢見る自分

 


彼がなけなしの勇気で

子供を助けたことを誰も知らない

彼がなけなしの財産で

ネズミを養ったことを誰も知らない

 


彼がなけなしの優しさで

老人の荷物を持ったことを誰も知らない

彼がなけなしの慈しみで

孤独な女を救ったことを誰も知らない

 


いつまでも自分に鞭を打つ

頭の隅で膝を抱える彼は傷だらけだ

それでも彼は 報われたいとは思わない

自分を嘆けるだけ 幸福なのだと知っているから