No.417 誰かの小さな石

彼は大きなリュックを背負っている

まるで登山へ行くようだ

行く先はいつも違うが 山ではない

何処というわけでもなく ただ出掛ける

 


出掛けた先では誰かが落とした

小さな石を拾い集め リュックに入れて持ち帰る

綺麗なものもあれば土の付いた物もある

不揃いな石を彼は分け隔てなく大切に運ぶ

 


家に帰って蛇口をひねり

大きなバケツの中にその石を入れる

土が流れて表面が滑らかになるまで

水を流し続け ゆっくりと洗う

 


それから天日干しにして乾かして

彼の部屋の床に敷き詰められる

小さな石は絨毯のように広がり

厚さは膝くらいまである

 


彼はその上で昼寝をしながら

誰かの小さな石が背中に当たるのを感じる

一人きりではない気がして

暖かい西日が消えるまで そうしている