No.551 beads

 

 

ビーズで出来た湖の中

裸の女たちが踊っていた

彼はスーツの中に狂気を忍ばせ

その女たちに視線を送っていた

 


シャンパンはいつものように冷え過ぎて

グラスと指がくっ付きそうだった

あまり持っていても仕方ないので

一気に飲み干して グラスはテーブルに捨てた

 


一人の美女が 彼の元へ近付いてきた

身体に極彩色のビーズを光らせ

手招きをしたので 彼が近寄ると

ネクタイを手繰り寄せて 顔を近づけて言った

 


「連れ去って」

彼はまず彼女に服を着せ

豪華な店から出て行き

車のドアを開いて 彼女を乗せた

 


彼女の身体にはまだビーズがくっ付き

煌びやかに窓の外を過ぎる夜の色に弾けていた

彼女の手に連れられ 谷間に彼の手が伸びると

札束がたくさん入っていた

 


本当の男と女は

裸の状態で出会うことは少ないのだろう

彼は 彼女と裸で出会った

彼女は 彼の裸を見たくて仕方なかった

 


家に着くと 車内で一回キスをした

腰に手を回し 抱き寄せながら玄関へ向かった

扉を開き 彼の部屋へと入ると

そこには 動物用の解体工具が並んでいた

 


彼は顔色を本性の色に変えて

彼女の顔を見た

その時 彼の考えでは

恐怖に震える女の顔があるはずだった

 


しかし 彼女は頬を赤らめ

「とても刺激的な部屋」と呟いて

解体工具を撫でながら部屋を周り

「シャワーを浴びてくるわ」と言った

 


彼はビーズを落とされたくなかったが

彼女の様子に違和感を感じ

同時に多少の恐怖を感じたので

奥のバスルームに案内した

 


彼女がシャワーを浴びている間

彼は彼女をどうバラバラにしようか考えた

しかし 後ろから殴られた衝撃で

その考えはフローリングにばら撒かれた

 


彼が目を覚ますと

「おはよう 始めるわね」と 彼女の声が聞こえた

両手両足は紐でテーブルの足に縛られていた

「あなた やっぱり私の好みだわ」と また彼女の声が聞こえた

 


目隠しと猿ぐつわをされたまま

彼は 金属の鳴く音を聞かされ続けた

それ以来 彼女は彼の部屋の主人となって

彼との営みを 毎晩欠かさなかった