No.475 涙を拭いて

 

 

(雨だから気にならない) 油断していた彼は

大いに笑うように 大いに泣きじゃくった

通行人は彼を不審者だと思ってしまったが

彼は通行人を天使か何かだと思っていた

 

 

騒がしい夜は終わってしまった

そして悲しみは彼の重りになってしまった

強がってはならない 優しくなってもならない

厳しい 冷たい 彼にとっての現実に 倒されないように

 

 

(雨だから気にしなかった) 理解が追いついた彼は

さらに 大いに 大袈裟と言っても良いほどに

天使たちに訴えかけるように 泣きながら

歌を歌い始めた 「酔っ払いは 新聞を読まない」

 

 

「何でだ?だって? 小せえ文字が読めるかよ

 飲むな?だって? 小せえこと気にするなよ

 歌えば気が晴れる 嫌なことは忘れられる

 泣けばいつか晴れる 止まない雨はないんだろ?」

 

 

天使たちは彼を避けていった

彼も天使たちを遠ざけてしまいたかった

一致した感情は瞬く間に 彼の観客を消した

彼は 家への帰り道も わからなくなってしまった

 

 

「もうそろそろ 雨が上がってしまいそうだよ

 十分 自分を哀れんだじゃないか

 さあ 帰ろうよ 温かいスープを入れよう

 ストーブも付けてさ さあ…」