No.496 彼と空き缶!

 

 

空き缶を蹴っ飛ばして 行き着く先で立ったら

今日は良い日になると信じていた彼は

転がり 草むらへと向かっていった空き缶を

恨むことでしか 自分を保てずにいた

 


寝そべったままの 自分の中にあったはずの

あらゆるスパイスのような感情を捨てて

ただただ のっぺりと広がっていく日々を

空き缶のせいにして 送り続けるのだ

 


もう何年 空き缶を蹴っ飛ばしてきただろう

彼は思い返して 一度も立たない空き缶を

想像で これでもかと言うほど潰しまくり

ぺしゃんこの手裏剣にして投げて遊んだ

 


靴の先に付いた空き缶のカスが

彼に辿り着く頃には 諦めてしまっているだろう

空き缶など見つけることすらないかも知れない

その前に 彼の足がどんどん銀色になるだろう

 


もしそうなったら 誰か

彼を思い切り蹴っ飛ばしてやってくれないか?

草むらへと向かって行った彼に

舌打ちをして 過ぎ去ってしまえば良い