No.410 図太い男

緩やかなカーブを描く道を

ふらふらと傾きながら歩く男

急な坂道に差し掛かり

ひらひらと零れ落ちてゆく男

 


宝物を心の中に仕舞って

秘めた欲望も 一緒に奥深く仕舞って

知らず知らず 図太くなる身体が

風邪をひかないように 彼を馬鹿にする

 


見知らぬ顔にどんな風に見られても

彼にとっては踏み潰した後の蟻のよう

曜日を数えて 月日を超えて

彼はまた一段と ふらふらとしている

 


心苦しい出来事が起こったとしても

秘めた欲望が怪物に育ってゆくので

図太い身体に引けを取らない心は

彼をまた一段と ひらひらにしている

 


緩やかなカーブを描く彼が

硬い壁に激突して ぺしゃんこになっても

急な坂道の上から転がり

尖った石に刺さり パチンと破裂しても

 


ふらふらとひらひらを両脇に抱え

ずっと笑顔でいることだろう

何しろ彼は馬鹿なのだから

何しろ 彼は図太いのだから