No.411 健気な休日と彼

味のついた憂鬱が 煙草の煙と昇る

低すぎる屋根に寝癖をからかわれ

彼は不機嫌にも味をつけて

ポテトチップスと一緒に平らげる

 


二つに割った心臓の一つを

ガラスのケースの中に入れて

それを見ながら何かを飲みたくなって

彼は水道水で喉を潤してみた

 


憂鬱よりも酷い味とにおいにやられ

彼はうずくまり 吐きそうになった

野良犬をそのまま煮込んだような味だ

(食べたことがあるか? もちろんあるわけがない)

 


彼はとても健気な休日だと感じた

こんなにも孤独を感じさせてくれる

高慢な想いをなだめてくれている

それでも やっぱり彼は腹が立った

 


窓の外に見えるスーツ目掛けて

箸置きを思い切り投げつけてみた

窓は彼が思うより丈夫に出来ていて

跳ね返ったそれは 彼の頭蓋骨を砕いた

 


遠くから救急車の音が聞こえ

家の前に止まり 彼を連れてゆく

さっきのスーツは 彼を助けてくれたようだ

やっぱり休日は 彼にとって健気なものだった