No.447 階段を降りる男

 

 

階段を降りて行けと言われた男

何となく言われたように降りて行った

少しあいた小さな窓の外の鳥

笑われているような青空に飛んだ

 


腹が減り力が湧かなくなってきた

彼は全てのことを忘れようとした

素晴らしい記憶たちは輝きながら

哀れんでいるようにこびり付いてきた

 


階段を降りて行けと言ったあいつは

今どこで何をしているか考えた

想像上でフレンチを食っていた

彼は情けなくなり止まりたくなった

 


そして階段に初めて座ってみた

考えていたよりもふかふかしていた

横になって彼は瞳を閉じてみた

睡魔は空腹を食い沈んでいった

 


夢は彼を包み込み離さなかった

どのくらい時間が過ぎていったのか

少しあいた小さな窓の外は夜

蔑んでいるような星空があった

 


彼は立ち上がり階段を降り始め

夢でのことは何もかも忘れていた

靴を脱いでも大して痛くなかった

裸足でふかふかな階段を進んだ

 


彼はそうしていつまでも降りていった

ただ地面に辿り着くことはなかった

何処までも笑い蔑む空があった

階段はベッドのようになっていった