No.446 部屋の窓からもネオンが見える

 

 

夜の時計の波間に挟まれ

秒針に何度も何度もはたかれ

シンメトリーの部屋の隅に座って

虚ろになりながらテレビを観ている

 


楽しげな人々の笑顔と声が

彼の心の傷に塩を塗りたくる

感動的なVTRの後で

我慢が出来なくなって街へ行く

 


澄み切った暗闇の向こうに見える

鮮やかなネオンと派手な衣装

その50メートル手前で裏路地へ

行きつけの店に顔を出して2時間

 


彼の腰が砕けそうになって

安い椅子から立ち上がると街へ

ネオンはまだ何かを照らし続けて

秒針はシンメトリーの部屋で待っている

 


彼のすり減った身体の熱さが

夜の静けさと涼しさで和らぐ

街から戻り 当たり前のように

部屋の隅で彼は朝まで過ごす