No.445 シュレッダー!

 

 

服のスイッチを押すと

様々なパターンの色と模様が選べる

今日の気分は空色のパーカーだったので

柄は鱗雲にしてみた

 


彼の一日はそうやって始まる

靴紐のない靴を履いて

扉を開くと 春の陽気が出迎える

(このまま空に飛んで行けそうだ)と彼は思う

 


階段を降りてゆき

自分の部屋番号のポストを開ける

中にはどっさりと営業のチラシがある

備え付けてあるシュレッダーにかける

 


シュレッダーは紙を吸い込むと

彼に「ご機嫌よう」と話しかける

重要そうなものはペッと吐き出す機能で

彼の手元に一枚の手紙が戻って来る

 


彼はそれを破って開き 中を読む

文字はぐちゃぐちゃだったが

彼には書かれている内容が分かり

涙がポロポロと溢れる

 


それを見かねてシュレッダーは

細かく刻まれた紙でハンカチを作り

彼にペッと投げつけてやると

「全く 人間というやつは」と呟く

 


彼は使い終わったハンカチを

またシュレッダーにかける

そして青空に溶け出していくように

近くのコンビニまで散歩をする