No.443 壁の彫刻を触る男!
壁には細かく彫刻があった
指で辿ると 不思議に終着点があるように思えた
彼はその壁に二時間ほど費やしたが
とうとう終着点には辿りつかなかった
離れて見てみると
壁には小さな天使が群れをなして
大きな悪魔に弓を引いていた
彼はその光景に吐き気がしてきた
悪魔は不適にも大軍に襲いかかる
天使は小魚のように一つに襲いかかる
その光景は 彼が思い描くよりも遥かに
彼の心の何かに 嫌な音を立てて響いた
さっき辿り着くはずだった彼の中の終着点は
完璧に消えてしまっって
壁に彫刻されたものも 得体が知れなくなり
彼の頭の中から天使と悪魔も消えた
それから 何故だか腹が立ってしまった彼は
壁に背を向けて歩いて行った
悪魔の方を向いていた天使たちが
彼の方へ弓を構えても 彼は気が付かなかった