No.433 彼と街中の星々

 

「あなたがあいつを見るときに

 とても醜いと感じることがある

 あいつもあなたを見るときに

 とても汚いと感じることがある

 

 しかし安心して良いのは

 この世の方がよっぽど醜く 汚い

 あらゆる悲しみも苦しみも

 あなた方がマシに見えるためにある

 

 あなたがあいつを知るときに

 とても美しいと感じることがある

 あいつがあなたを知るときに

 とても愛おしいと感じることがある

 

 しかし安心してはいけない

 この世の方がよっぽど美しく愛おしい

 あらゆる喜びも慈しみも

 あなた方が惨めに見えるためにある」

 

 

そう呟いているホームレスが

ヨレヨレになったダンボールに字を書いていた

彼にはその字が読めなかったが 隙が出来た

僅かな金の入った空き缶を 気付かれずに盗んだ

 

彼はその金で酒と煙草とつまみを買った

この街で一番 見事な夜景が見える丘で

今にも崩れてしまいそうなベンチに座った

止めどなく流れる涙をそのままに

 

そして 飲んで 吸って 食べた

瞳を閉じると そのまま深く深く眠った