No.414 少し更けた夜の歩道橋
図画工作の時間に描いたマンションの絵
四角は無様にずれて情けない
彼の思い出に出て来る学校の先生は
マンションの絵を褒めてくれていた
彼は今 その絵のような景色を見ている
あらゆる四角がずれて 光が伸びる
瞬きをするたびに溢れる涙が
その四角と光を さらに引き伸ばす
マンションは建ち並び
風に流されて 飛んできた孤独を受け止める
その孤独が 塊となって上に積まれる
夜の曇天を突き刺し それを彼は感じる
マンションから漏れる光が
次第に消えてゆくと 孤独は上昇する
雲を突き破り やがて見えなくなる
空よりも高い場所へと移動する
彼は孤独の跡を見るように
あの日に描いたマンションの絵を重ねて
景色を眺めながら 自らの孤独を撫で
「お前もあそこに行けたらな」と呟く
そして新しい孤独が生まれて
マンションへと降り注ぐときに
彼は初めてその場から離れて
また天に登る孤独を見にやって来る