No.415 ダイナシ

一日の終わりを台無しにするのが上手い男

目にかかる長い前髪を避けると

彼の視界を遮る電柱が邪魔だと感じ

右足を構えて 腰を捻り 蹴りを入れた

 


電柱は彼の足の甲を痛烈に批判して

「そんな蹴りで俺が痛がるとでも?」と言った

彼は自分の足の甲にヒビが入ったと思い

「くそ! 訴えてやる!」と言った

 


電柱は彼に蹴りを入れたくて

コンクリートに埋もれた足を抜こうとした

彼は電柱を殴りたくなって

左の拳を握り 肩を引き 胸を張り 殴った

 


電柱は彼の拳と尖った骨を批判して

「そんな力で俺が折れるとでも?」と言った

彼は自分の手首から先が全て粉砕した気分で

「うるせえ! 慰謝料払え!」と言った

 


一日の終わりを台無しにするのが上手い男

ただ 初めから大した一日ではなかった

電柱とじゃれあっている夜は 朝や昼より

彼にとっては ずいぶんマシなように見えた

 


一日の終わりを台無しにするのが上手い男

一日の始まりを台無しにするのも上手い男

生きるのが下手な男は 電柱を相手にして

電柱は 暇潰しに彼に付き合ってやった

 


一日の終わりを台無しにするのが上手い男

一日の中間まで台無しにするのが上手い男

一日の始まりがもうそろそろ来る

また更に 新しい一日を台無しにしようと企む