No.379 テーマパークに一人の男!

 

 

ジェットコースターの列に並べ!

愛想を振りまく着ぐるみを撃ち殺すために

マシンガンにチュロスの弾を込めろ!

一番高い所から落ちる時に引き金を引けるように

 


男は一段 また一段と階段を登る

まるで首を吊られに行くように待っている

さて 次は彼の番だ という時になって

雨が降り ジェットコースターは止まる

 


彼は階段を降りて 千切ったチュロスを仕方なく食べる

マシンガンは ポップコーンのケースで

もう一度チョコレートがかかったやつを

食べずにはいられずに バカ高い値段で買う

 


それから 彼はピンク色の傘を買って

そこらに居た女の子と相合傘をしたりする

水を吸い込んだ着ぐるみがこちらへやって来て

女の子はその中身を覗きたくて着ぐるみの方へ行く

 


彼はやさぐれて 傘を折ってそこらに捨てる

雨に濡れ ジェットコースターを見上げていると

捨てたはずの傘がいつの間にか消えて

綺麗で仕方ない地面は 楽しげに水溜まりを作る

 


彼はその水溜まりを踏み付けて

全て水しぶきにしてしまいたくなる

ジェットコースターに乗って奴を撃ち殺していれば

(あの女の子は俺の傘の中に居たというのに!)

 


しかし ジェットコースターに乗れることは

雨は降らないことを意味して

ピンク色の傘を買わないということは

女の子に巡り合わないことを意味している

 


そう考えた時に 彼は急に馬鹿らしくなって

超高速で回るコーヒーカップの中に入って

カフェモカになることを夢見ながら

ココアパウダーとシナモンを被りたくなった

 


しみったれた格好になり

髪の毛は垂れたまま ゲートをくぐり

クソみたいな潮の匂いがするやけに冷たい風と雨を浴びながら

電車に乗って 地元の駅へと向かう

 


彼の頭には 犬の耳のカチューシャが刺さり

彼の脇腹には ポップコーンのケースが挟まり

彼の上着は あの着ぐるみのキャラクター物で

彼の一人の休日は 一人のまま 屈折して終わった