服が風を切る音が聞こえる
うたた寝をしそうな日差しの中
バイクの振動は 小気味よく彼の鼓動をなだめ
重たく 素っ気なくなる 目蓋を閉じる
彼が目を覚ますと
運転していた友人がいなかった
ホテルの受付で何やら話している
彼はまた目を閉じた
風が額を擦り 鼻をくすぐる
早くなればなるほど 彼は眠くなる
日差しは強いが 風のおかげで
過ごしやすいとさえ感じる
彼が目を覚ますと
また友人がいなかった
首を回して 探していると
木陰の中から チャックを上げる音がした
風が風を運ぶ音が聞こえる
彼はもう ほとんど死んだように眠る
友人は 何も言わずに彼を乗せて走る
全ての事柄が 明確でない方向へ
彼が目を覚ますと
友人は海で遊んでいた
彼は バイクから降りたくなったが
降り方を忘れたので また眠りについた