No.307 nap

 

 

服が風を切る音が聞こえる

うたた寝をしそうな日差しの中

バイクの振動は 小気味よく彼の鼓動をなだめ

重たく 素っ気なくなる 目蓋を閉じる

 

 

彼が目を覚ますと

運転していた友人がいなかった

ホテルの受付で何やら話している

彼はまた目を閉じた

 

 

風が額を擦り 鼻をくすぐる

早くなればなるほど 彼は眠くなる

日差しは強いが 風のおかげで

過ごしやすいとさえ感じる

 

 

彼が目を覚ますと

また友人がいなかった

首を回して 探していると

木陰の中から チャックを上げる音がした

 

 

風が風を運ぶ音が聞こえる

彼はもう ほとんど死んだように眠る

友人は 何も言わずに彼を乗せて走る

全ての事柄が 明確でない方向へ

 

 

彼が目を覚ますと

友人は海で遊んでいた

彼は バイクから降りたくなったが

降り方を忘れたので また眠りについた