No.562 ブルーハワイと親しげな蝙蝠
彼の身体から 泡と青い色素が溢れ出て
ブルーハワイが 浴槽を満たすと
匂いに釣られた蝙蝠が 浴室の窓の隙間から
羨ましそうに 彼の方を見つめていた
湯気に混じってアルコール
彼はひたすら酔っていた
ブルーハワイはカクテルの
成り損ないのようだった
夏が終わるというのに
蒸し暑い夜の 43度の風呂の中
彼は全てが溶け出して
やがて排水口に流れると悟っていた
なので 窓を開けて
蝙蝠と一緒に風呂に入ろうと決めた
気持ち良さそうにブルーハワイに浸かると
獣のにおいがツンとした
気が付いた時には彼は眠っていた
開けっ放しの窓から 蝙蝠が何百羽も入ってきて
排水口を閉じてしまったので
半分溶けかかっていた彼は 流されなかった
これでやっと 遠くまで行けると思っていたので
彼は酷く落胆し 風呂から出て身体を吹いた
バスタオルは彼の溶けた皮膚を剥がして
20キロほど重くなった
彼はブルーハワイのシロップを
冷蔵庫から取り出して
明日は窓を開けないでおこうと決めて
腰に手を当てて飲み干した