No.533 アイスクリームな彼
ミシミシ鳴るフローリング
少し浮いているような気がした
うだるような暑さが硝子窓の外で
揺れながら 手招きをしていた
彼は涼しい家の中から出たくなかった
しかし 外に行けばきっと楽しいだろう
そう思って 硝子窓に触れてみたが
今にも溶けてしまいそうな熱さで 怖気付いた
彼はリビングに居座ることにした
テレビを付けても 楽しいものはなかった
古いビデオの束を覗いてみても
もう何回も見たものばかりだった
ゲームも全部クリアしてしまっていた
途方に暮れて スケッチブックを持って来て
ソファに深々と座り
部屋の中を描いてみることにした
あるものだけを描かずに
欲しいものを付け足した部屋が描き上がった
それを眺めていると 無性に虚しくなってきて
彼は外に出ることに決めた
しかし 外の気温は
彼を溶かすことに躍起になっていたので
彼はすぐに液体となり
そして すぐに気体となり 見えなくなった