No.555 memory

 

 

彼は煌めくものを見ていた

ずっと前に無くしてしまったもの

探しても どこにもなかった

それを やっと見つけた

 


暗がりで瞳を閉じると

それを見つけられたので

来る日も来る日も そうして

焼き付けようとした

 


(彼は教室に入り ホワイトボードの前を通った

 奴らは教室の真ん中あたりに座っていた

 彼を見ると笑顔になって

 名前を呼んで 話を始めた

 

 放課後にはゲームセンターに行って

 彼の見慣れないゲームをやった

 眩し過ぎる映像が暗くなると

 笑っている奴らと 彼が写っていた)

 


頬を伝う涙の理由を

彼は 痛いほどに理解していた

しかしある日 テレビのスイッチを切るように

それを消してしまった

 


煌めくものはそれ以降見えなくなった

彼は分かっていてが もう一度スイッチを入れた

そして 砂嵐の中に 自分の影を落とし込んだ

その影は 無様な踊りを 彼に披露した

 


(ある程度 一人に慣れてしまえば

 この思いは濁っていくばかり

 たまに恋しくなったとしても

 それはもう何処にもない

 


 囚われたまま歳を取る

 いつまでも彼は逃れられず

 それでも 彼を慕ってくれた奴らが

 幸福であるようにと願う)

 


目が覚めると午前三時

もう少しでこの部屋も明るくなるだろう

彼は五時間後には

各駅停車の電車に乗るだろう

 


繰り返す日々の中で

またそれを探そうとするだろう

しかし もうそれは映らない

彼は 映らないと知りつつ 映そうとするだろう