No.554 HEAT
夜を睨みつける完璧な瞳
彼は光すらも黒く塗れそうだ
髪をかき上げ 煙草に火を点けた
そのまま周りの空気にも火を点けた
彼の周りに円を描き
炎は細い糸のように回った
夜を睨みつけていた瞳は
次は時間を睨みつけていた
時間を移動して 彼は目的地に向かった
過去も未来もある 時間は彼の目の前にある
10日前の同じ時間まで戻ると 彼はまた夜を睨んだ
空からは 無数の強い光が降り注いでいた
その強い光が 「この世のもの」とは思えない速度で
彼の目の前の 愛すべき街並みを燃やし尽くした
身に纏った炎と 咥えた煙草の煙でその光を跳ね返し
生存者を増やすために 彼は10日間を繰り返していた
しかし 彼はその光に対して無力だった
焦げてきた服を気にすることもなく
10日過ぎれば また10日戻った
彼が燃え 灰となるまで 光は繰り返し 降り注いだ