No.342 ノンシュガー

 

 

大好きな砂糖とバターのトーストを

コーヒーで流し込んだ男

腹が満たされて いたって快調な顔付き

ケロリと忘れた 昨日の惨劇

 


嘘みたいな光景だった

交通事故を初めて見た

忘れられた粉々のフロントガラスと

血みどろになった塊

 


惨劇は 噂になっている

電化製品を売る店では

そのニュースを流すので

同じキャスターの顔が並んでいる

 


その横を通る男は 要らない鬱屈は捨てて

足らない快楽やらを思い 唾を飲み込む

男の快楽は 暴飲暴食 そしてセックス

肉を食いながらバックでするのが好きだ

 


でっぷり太った身体で

昼間っから ピンクのネオンを煌々と付けた

良い女の居そうな「怪しい店」を探して

フライドチキンを持ち込んだ

 


その「怪しい店」は 男を咎めずに

奥に通し 一番の女をあてがった

フライドチキンを貪りながら

男は柔らかい女の尻を何度も叩いた

 


女は 叫び声もあげず

挿入しても反応もしない

性器は吸い付き 男は果てそうになって

慌てて動きを止めて 肉を飲み込み言った

 


「お前 不感症か?」

はやけにしゃがれた声で答えた

「いいえ とっても良いわ」

男は上機嫌になって 脂ぎった手で胸を触った

 


女は 何も反応しない

しかし男は あまりの心地良さに

果てて 搾り取られてしまった

そして 砂糖とバターを排泄した

 


残ったトーストとコーヒーは 男の腹で踊り

逆流したフライドチキンが 男の口の上で歌った

天井に 油が飛び散って

男は 女の後ろに仰向けで倒れた

 


石のようになって

全く動けないほど固くなって

快楽の中に飲み込まれて

射精が止まらないような気がした

 


女は 固くなった男の身体を舐め

「あぁ やっと理想に近づいた」と囁いた

そうして 勃起したままの性器を

怪物の口のような性器でくわえた

 


そして 店中に聞こえるほどの大声で

何度も何度も男を犯した

固くなった脂肪が 女を何度も絶頂させて

女は 天井から降る油を浴びて光っていた

 

 

 

事故の瞬間そんなような感覚だったという

病室で 男の「死に近づいた話」を聞いていた女は

気味悪さのあまり 男のベッドに吐いてしまった

傷口に吐瀉物が入り込み それが原因で男は死んだ