No.341 空回り

 

 

走る 転がる 

ぶつかる 止まる

あの日の面影を 

探して また走る

 


その男は

一人ぼっち 

それが必然で

彼は流れ星 

 


何処にも 

辿り着けない

 


夢の中へ 

そっと忍び足で 潜り込む女は

彼を愛することで 自分を保っている

女の友人は言った 「見合うことは有り得ない」と

 

 

 

彼は誰よりも 低い場所で 孤独と居た

 

 

 

戦え 

戦えと 誰かが言っている

誰か というのは 

一体誰なのだろうか

 


臆病者 

人でなし 

誰かが叫び出す

 


無数の声が 

折り重なり 

響き渡る

 


彼は答えられなかった 

声が出なかった

夢で女に会っても 

無視をする他なかった

 


涙ぐむ女を見て 

彼は少し狼狽えた

女は近付き 

彼をそっと抱いた

 


抱かれる感覚の中で目覚めるのは

それほど悪くはなかったが

まだ鼓膜にこびり付く誰かの罵倒が

脳裏によぎった 過去の最悪と結び付く

 


走り 転がり 

ぶつかり 止まり

あの日の面影を 

ひたすらに 探し

 


彼は一人ぼっちでも 

それが必然に思い

流れる川に 身を委ね 

辿り着かない

 


あの日の面影は 

果たして何なのだろうか

 


愛していた女か 

彼を罵倒する誰かか

脳裏によぎった最悪か 

その全ての面影か

 

 

 

わからない 彼にもわからないのだから わかるはずもない

 

 

 

彼は 荒野を抜ける時 

ひんやりとした夜に当たった

身が切り裂かれるほどの痛みが走り

太ももを見ると一文字に凹んでいた

 

 

 

身体が 一番先に折られてしまった

 

 

 

それから 

心や魂までもが折られて

彼に残されたのは 

面影への強い執着だった

 


その執着だけが

走り 回り 

転げ 回る

ぶつかり ほとばしり 止まり 

 


再び 

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