No.593 リトルチョップな彼!

 

 

彼は啓発をする本が嫌いだった

腐るほどある意見の中から

自分と合う意見を見つけられずに

勝手に仲間外れにされているような気がした

 


そこで 彼は自分の考えたことを説くため

啓発本の作成に取り掛かった

スムージーをチョップする方法や

ビートルをスプリングする方法を書いた

 


彼自身 これが自分の意見の集大成だと思え

知人に頼み込んで本を出版して貰うことにした

知人はその本の中身に興味がなかったが

知人の後輩は その本を読んで絶句した

 


彼はどこの世界から

この世界に迷い込んでしまったのだろう

そういうことに詳しい「知識人」に話し

その本を考察してもらうことに決めた

 


「知識人」が言うには

彼はこの世界から遠く離れた

プラスマイナスゼロの世界から来たとのこと

知人の後輩は 彼の知人に報告した

 


彼の知人から 彼に電話がかかってきた

「君の本 売れるかもしれない!」

本屋で啓発本を読み漁っていた彼は

「それならプラズマで スクリーンだ!」と答えた

 


後日 彼の啓発本は本屋に並び

他のしたり顔の連中と共に顔写真まで載せていた

腕を組んで 自信たっぷりの彼の下にある帯に

「こんな本読んだことない!—-新たな奇書、誕生」と書かれていた

 


彼は 意味がわからなかった

まるでスクラッチをスイングして

フルスロットルなフラメンコだ

結局 彼は誰のこともわからないし 誰も彼のことをわからない