No.582 彼と野良犬
立ち止まると ついてきた野良犬も立ち止まった
彼は振り返り 屈んでみた
野良犬はじっと彼を見つめたまま
近寄ることはなかった
彼が歩き始めると 野良犬はやはりついてきた
背中に美味そうな匂いでも付いているのだろうか?
そんな考えで 服に鼻を当てて嗅いでも
洗剤の化学的な香りしかしなかった
彼は コンビニに入って雑誌を買った
店内を回っている間 野良犬は
少し離れたところで座って待っていた
彼が外へ出ると 共に歩き始めた
彼が自宅の鍵を回し 扉を開けた途端に
野良犬は走って 中に入って行った
彼は焦りながら室内を探したが
野良犬は何処にも居なかった
彼は ソファに座りテレビを付けた
野良犬のことはもう気にならなくなった
それからというもの 食材の減る量が
少しだけ多くなったが それも気にならなかった