No.575 通せんぼ!

 


通せんぼされた彼は どうしようか迷って

手を広げた人々の上を越えようとした

痛がる顔で まだ通せんぼの格好で

人々は頭や肩や膝を痛めながら 彼を登らせた

 


超えた先には さっきよりも多くの人が

通せんぼしながら 彼を睨みつけていた

超えられた人々は 彼の後ろ手息を切らして

次にやってくる彼のようなやつを通せんぼした

 


「何かを成し遂げるためには」

そんな苦労が必要だと彼は言う

それを聞いた少年は

「踏み越えるより回り道のほうが楽だ」と言う

 


彼は悔しくなって 少年の目の前で

両腕を大きく広げ 膨れっ面で通せんぼした

少年はニヤリと笑って 買いたてのスニーカーで

コンビニに寄るついでに 彼を避けて行った

 


彼は少年がいなくなると悲しくなってしまった

語り合える友達は もう居なくなってしまった

そう思いながらベンチでうなだれていると

少年はコンビニで買ったパピコを折りながら戻ってきた

 


「おじさんは 何かを成し遂げたんだよね?」と

円な瞳で聞く少年に 彼は何も言えなかった

「踏み越えるより避けたほうが早いな」と

呟きながら 彼は少年とパピコを食べた