No.485 焼け残った彼!
焼けた家の下敷きになった人の身体があった
それは綺麗に炎を避けて 無傷で倒れていた
家具の亡骸や屋根と骨組みの名残がのしかかり
上からそれを地面に埋めようとした
彼が目を覚めると そんな状態だったので
動けるだけ動き 自分の肌に触れてみた
火傷はなかった いつもより血色が良い
家具と屋根と骨組みを蹴っ飛ばすと 灰が舞った
重さが水分と一緒に蒸発してしまったようだ
彼は喉が渇いた 焼けた家の残骸から出て来て
「喉が渇いた」というだけなのも不思議だ
普通は丸焦げで動かなくなっているのに
彼はコンビニで麦茶を買って すぐに飲んだ
水分が 彼の喉に纏わりついて 安らぎを与えた
しかし 一気に飲み過ぎて 咳き込んでしまった
2リットルの麦茶のペットボトルは 軽くなった
そのペットボトルで 彼は海へと旅に出て
焼けた家の代わりに アメリカの田舎の
よく映画で見たような 大きな家を探して
そこで 必要なものだけでの暮らしをしたくなった
泳げない彼は 焼けた家から生還したおかげで
かなり妄想を真に受けやすくなってしまった
ペットボトルだけでどう海を渡るのだろうか
アメリカに行ったって 彼は英語なんて話せない
気が付くと 空のペットボトルを小脇に抱え
彼は焼けた家の場所へ戻って来ていた
焼けた家は灰になって飛んでいってしまいそうで
手伝ってやろうと 彼は色んな物を蹴っ飛ばした
焼けた家の下敷きになっていた 他の
しかも かなり多くの友人の身体ごと
風に飛ばして 遠くに運んでやりたくなった
アメリカは おそらく大して遠くない