No.507 眉間の皺と彼の頭痛
彼は頭痛に悩んでいた
仕事が終わる頃 頭の至る所が
キシキシと締め付けられるようで
次第に ズシリズシリと重くなった
家にたどり着く頃には
満身創痍のペラペラな身体で
重い頭痛を抱えていたので
腰が砕けそうになっていた
毎日 この痛みに耐えてきた彼の
眉間の皺は 深く深く刻み込まれ
まるで刺青を入れたように
消えず 人を威圧し続けていた
冷やしても 温めても 効果はなく
彼は気が付いていなかったが
少しずつ頭が膨らんでいって
尖った物を刺せば 中身が出そうだった
彼に向かって尖った物を
投げつけて来る人々もいたが
避けて 避けて 街を歩いて行った
彼は 投げられたことも知らなかった
そんな日々が流れて
いつもよりひどい頭痛の日が訪れた
その日は 彼にとって災難でしかなかった
家に帰った途端に 倒れ込んで寝た
彼は夢を見た
「もう行くよ」と 眉間の皺が言った
そして「随分辛い目に合わせたね」と続けた
彼は不思議な夢だと思っていた
彼は夢から覚めた
朝だ いつも通りの朝 洗面台に向かおうと
立ち上がり スタスタと歩いて行って
鏡を覗き込むと 彼は驚いた
眉間の皺が 綺麗さっぱりなくなっていた
その名残を撫でても 元からなかったようだ
彼は戸惑いながら出かけた
その日以来 彼の頭痛はピタリと止んだ