No.573 ノモフォビアに導かれ

 

 

液晶の中を漂う 宇宙船に一人

彼は自由気ままな冒険者 そして迷子

緑と青と赤の 惑星を旅してきた

退屈はどこにも見当たらない

 


緑の星には文字のオブジェが

彼の知らない並び方をして

たまに聞こえる大きな声が

空の上でけらけらと笑っていた

 


青の星にも文字のオブジェがあった

規則正しく並んで道を作った

写真や絵が貼られた 丸い看板を潜ると

数多くの酒場が出迎えた

 


赤の星には永遠に流れる映像があった

様々な顔が 様々な言葉を伝えた

白い三角のボタンを押すと

好きなものを好きなだけ見れた

 


宇宙船に戻り また旅立って

白い惑星を発見した

オブジェを建てたくなった彼は

巨大な文字の欠片を繋ぎ合わせた

 


時間をかけて出来上がった惑星は

彼にしかわからない名前を付けられて

宇宙船に戻った彼に

手を振って 「また会おう」と言った

 


銀色の惑星を見つけた彼は

その奥深くに入って行った

巨大な歯車のオブジェの群れが

今にも襲いかかりそうに傾いていた

 


行き止まりまで辿り着くと

一際目立つオブジェに触れた

その瞬間に全てが消えてしまったので

彼も一緒に真っ暗になった