No.557 正常な彼と隣に住む異常な男

 

 

自分を正常だと思っている彼は

他人と自分を比べて 優位に立っていると知れば

攻撃を止めず 自分が優位でなければ

その靴を舐め回すのも厭わない 狂った犬だ

 


彼はそんな生き方をしているせいか

味覚がバカになってしまった

連日ニュースで 「味覚がしなくなったら危険」と

放送されていても 数年前から味なんてしない

 


彼は何を食べてもニコニコ笑っている

バカな舌は ハンバーガーもフカヒレ

チーズケーキもエビチリもトイレットペーパーも

全て同じ味として 彼に届け続けた

 


それでも 彼はやっぱり正常だと確信していた

何故なら 舌がバカになった奴らの方が多いからだ

ニュースは嘘ばかりなので 彼は更に確信した

彼は多数派で 正常で 舌がバカ過ぎるだけなのだ

 


そんな彼の家の隣に住む男は

彼にとって とんでもない異常者だった

男は 自分と相手のどちらが優位かということを

考えずに行動している奴だった

 


彼は たまに男の家に行って

一緒に飯を食べる時もあるのだが

醤油も味噌もわからないラーメンを

とても美味そうに食う男は やはり異常だ

 


彼はその男がとても嫌いだったが

何故か 男は彼にとても親切だった

その親切さが むず痒くてたまらないが

この男といると時だけは 彼は異常になれた