No.558 蒸し暑さと闘う男
夜を漂う彼は 蒸し暑さと格闘していた
とても長く 苦しい闘いだったが
とうとう 彼は蒸し暑さを打ち倒した
経験値はいつもの通り 後で振り込まれるだろう
次に彼は 朝の肌寒さと格闘しようとしたが
朝にも蒸し暑さが参戦することもあり
昨日勝ち越したので 見て見ぬふりをして
汗をかきながら 闘わずに通り過ぎるのを待った
昼には 蒸し暑さが彼の喉笛を切り裂くために
彼の体内に大量の水分を閉じ込めたまま
「電子レンジ 1500Wでの解凍」を始め
彼の氷を溶かそうと必死になった
彼の氷は 彼の心臓の中にあった
何を見ても 何も感じない
そんな心が その塊を生み出していた
しかし 心が心臓の中にあるとは限らない
彼は 頭の中で思い出してしまった
蒸し暑さの攻撃を まともに食らってしまいそうな
とんでもなく弱々しいもの 「プール」を
すると彼は 空想のプールサイドに座っていた
空想のプールサイドで彼の水着は焼かれた
それから彼は そこから動けなくなった
目の前にあるプールに入ることも出来ず
蒸し暑さに 清々しいほど負けてしまった
それからは 彼は弱くなったが
夏が終わろうとする気配を感じて
秋に賄賂を送る準備を始めていた
涼しくなる頃には 蒸し暑さは死んでしまうだろう