No.428 淡い幸運と濃い悲運

 

 

彼は人妻に手を出したことがバレて

彼を殴り殺そうとする夫から逃げていた

「そんな大したことじゃねえだろインポ野郎!」

悲痛な叫び声は繁華街を駆け抜けて行った

 

 

裏路地に逃げ込み 一息つく

ゴミとドブの臭いがキツかったが

どんな場所よりも安心した

すると 目の前にあった中華料理屋の裏口から女が出てきた

 

 

「そんなとこでどうしたの?」女は聞いた

彼はその女の顔の良さとはだけた服から見える乳房を見て興奮した

「今逃げているんだけど そこ入って良いか?」

女は彼を厨房に案内し 待合室へ通した

 

 

運良く閉店中で店主もいない

こんな良いシチュエーションは安いAVにもなかなかない

そう思った彼は女を呼んで

「体を拭いてくれ」と頼んだ

 

 

上半身が裸になった彼の汗を拭いているうちに

今度は女の方が興奮してきたのか

身体中にキスをし始めたので

彼は宝くじに当たったような気がして 事を終えた

 

 

次の日 彼は料理長の娘に手を出したことがバレて

肉切り包丁を持った太った中年の男から逃げていた

「無理やりなわけじゃねえよクソジジイ」

彼はどんどん自分に体力が付いてゆくことを感じていた

 

 

逃げ回っていると 偶然大学生が…

逃げ回っていると 古本屋の店員が…

逃げ回っていると ベンツに乗ったあの人妻が…

逃げ回っていると チャイナ服を着たあの中華料理屋の娘が…

 

 

幸運と悲運が何度も繰り返され

最終的に彼はずっと寝室で寝ることにした

そこへ 久しぶりに彼女からの連絡が入った

それまでの女に関する出来事は 全て忘れてしまった

 

 

しかし人妻の連絡先だけは

その後もずっと取っておいた

着信履歴にも しっかりとその番号はあり

その回数分 彼はまたリスクを冒しているのだろう