No.303 イルカたち
エスカレーターの人混みが
陽の光のせいでイルカの群れに見える
あの有名な「綺麗なだけの絵」のように
薄っぺらな空白の中を泳いでいるように見える
銀色が通り過ぎる 名残など何も無い
イルカたちが降りて イルカたちが乗って
水族館のような塊が 何事もなく去っていき
取り残されたイルカたちは 次を待っている
ガラスに反射して また陽の光が遊んでいる
遊び疲れた光は 影のところで休んでいる
時間が来た そしてイルカたちと銀色に乗る
銀色は何処まで行けるか イルカたちは知っている
あぶくが雲になって 太陽を塞いだから
イルカたちは たちまちおぞましい姿になった
それからは覚えていない いつの間にか着いていた
銀色から降りると 銀色はやはり何事もなく去った