No.493 透明になれる毒

 

 

毒を持て 手にめり込むほどに

薄い硝子はすぐに割れるだろう

その痛みで目覚めて 手を振って毒を撒け

彼と同じように この世を味付けしよう

 


牙の中に何かを仕込んで

ことあるごとに噛み付いてやれば良い

歯形に溶けた あらゆる本の数百ページを

味がしなくなるまで噛み続ければ良い

 


彼と同じようになりたい青年は

心が弱いと言われて 消えてしまいたくなった

彼は青年を見つけると 頭から毒をかけて

消えてゆくことを肯定して 手伝ってやった

 


青年は消えた 正確には 透明になった

生きているのか死んでいるのかもわからない

彼の毒は青年の心の弱さを隠して

心の強さも隠して その他の全ても隠した

 


青年は隠された場所から

狙いを定めて 手をピストルの形にして

指先から出る毒の弾丸で

何百という人々を 同じ透明にした