No.458 パティスリーなんて!

 

 

外側だけをコーティングされた

甘そうで美味しそうな言葉たちが

小綺麗なショーケースに並ばされ

注文されるのを待っている

 


それを食った人は たちまち苛立っていく

中に隠されたスパイスが 腹の底から効いてくる

それを食った別の人は 悲しくて泣いている

中に隠されたクリームに 腹の中を乱される

 


店主に何故そんなものを売るのかと聞く男がいた

店主は「そうしないと売れねえだろ」と答えた

次の日には新作の可愛らしい言葉たちが並び

それを目当てに長い行列が出来ている

 


彼はショーケースを食い入るように見つめていた

どれにしようか迷って 一番気になったものを買った

家に帰ってからその言葉を切り開いて

中身を取り出すと 鼻を摘み それを窓の外に投げ捨てた

 


それから冷蔵庫にあった不格好な言葉を取り出し

ラップを剥がして 小さな皿に盛り付けた

「美味しそう」とは言い難がったが

彼にとって最高の腹ごしらえになった