No.459 彼と悪魔

 

彼は疑うことを知らなかった

何度も欺かれて 金はほとんど残っていなかった

今日も彼を必要とする悪魔がやって来て

彼に金をせびり 「ない」と言っても帰らなかった

 


悪魔は彼の部屋に入り あたりを見回した

彼が一生懸命働いて買った 唯一の宝を見つけた

「これを預かってやる」と言って悪魔は帰った

悪魔の機嫌を損ねたことが 彼の心にこたえた

 


悪魔は帰り道に買取をしている店に入った

「これ いくらになります?」と店員に聞くと

店員は驚いて 悪魔から彼の宝を受け取り

値踏みを始め 「うちでは買えないです」と言った

 


カッとなった悪魔は 彼の宝で店員を殴った

店員の頭から血が出て それが彼の宝に付いた

悪魔はそれから彼の家へ向かい

「こんな物どうしようもねえ」と言って彼の宝を返した

 


彼はその宝を手に持ち 呆然としていた

悪魔が店員にした行動の結果だけが彼に降り注いだ

数時間後 警察が彼に「人殴って逃げたろ?」と聞いた

彼は「はい」と答えるほかなかった