No.404 走る魚
足が土を掴む 後ろに払われて埃になる
魔法のチョークで書かれたゴールを目指す
彼を釣り上げたのは屈強な腕をした釣り人で
針の先のそいつの口髭を飲み込んでしまった
針はもう腹まで行った 釣り上げた釣り人も
消化液の中で泳いでいる 彼が湖を泳いだように
足が痺れても 彼はゴールへと急ぐ
そのゴールが何処にあるか それはどうでも良い
彼はとりあえず走って 魔法のチョークの匂いと
書かれた痕跡を辿り 息が出来ないことも
湖に忘れたおやつの水草も あれもこれも
忘れるように心がけて 足を動かしている
「走る魚」という名前で彼はニュースになった
チョークで書かれたゴールは 何処にもなかった
しかし 魔法のチョークを手に入れた彼は
また陸に上がってくるだろう魚のゴールを書いた
有名になっても 彼はまた走りたくなった
そうして今も 存在しないだろうゴールを目指す
彼を珍しがる人間どもを食い散らかしながら
彼はずっと 干からびたとしても 走り続ける