No395 夢見るハリウッド!

 

 

キャデラックを夢見るオンボロ車

金を片手に風切る奴ら

そんな奴らを横切る彼のことを

知る奴はいない 忘れられることもない

 


看板を眺めて 野望を抱いても

別に忙しくなるわけじゃない

撮影スタジオの前でコーヒーを飲んでも

アクション映画のスターになれるわけじゃない

 


売れてる監督は こう言っていた

「今はクソみたいな映画しかない」

彼は監督の胸ぐらを掴んで

「クソみたいなのはあんただ」と言った

 


ネオンが灯る酒場の隅で

彼はボロ雑巾のようになって倒れた

売れてる監督は 襟を直して帰って行った

彼もオンボロ車に戻りヒーターを付けた

 


埃っぽいにおいの中で彼は

好きな映画のサントラを聴いた

遊ぶ金はもう残り少なかった

勝負をかけるには時間も足りなかった

 


小さな銃を 怪しい男から買った

彼はそれを持って人のいない場所へと向かった

荒野の真ん中 考え込んで

自分を埋める穴を掘ると 大金が出て来た

 


彼はまた輝く街に戻って

まずは豪邸 その後ネオンが灯る酒場に向かった

それから 売れてる監督を見つけ

豪邸に呼んで 一緒にスタローンを観た

 


そんな夢も叶うことなく

彼はすっぽり穴に入った

引き金を引くまでの間

故郷の景色が彼の目の前に広がった

 


引き金を引くといつもの朝を迎えた

良い夢だったのか悪夢だったのか

わからないまま いつもの工場へと向かった

オンボロ車だけが現実と全く同じだった