No565 焼き鳥
芳ばしい香りがして 彼はたまらなくなった
こんなにも切ないことがあるのだろうかと
自問自答して 自分が情けなくなった
まあいつものことだが 今回は程度が違った
彼はとても死にたくなった
未だ 微かに聞こえる奴の鳴き声で
朝に起きていたことを思い出して
奴に付けた名前をひたすら呟いた
彼はいつも疑問だった
何故 奴らには名前がないのだろう?
彼が付けなければ どうとも呼ばれない
奴らは寂しくないのだろうか?
我が子が詰まっているかも知れない揺りかごを
勝手に持っていかれるようなことをされても
奴らは全く気にしないようだったので
自分だけが寂しいことに 彼は気がついた
それにしても芳ばしい香りがする
(何本か買って帰ってしまおうか)
そう思うと同時に 手が4の形をして
塩かタレかを悩んでる間に 彼は死にたくなくなった