No.502 もう一度眠ったら もう一度会えるだろうか
本棚に詰め込まれたCDを眺めていると
彼は無性に昔を思い出した
ブラックアイドビーズだけが浮き出ていた
そのCDを買った古本屋が潰れたことも思い出した
ヤングアメリカンズの下に
ブラックプラネットがあった
もっと長い名前のアルバムだと思っていた
その下に オレンジサンシャインとミラクルダイビングがあった
タクシー マムーナ ボーイズアンドガールズをPCに取り込みつつ
クロージングタイムを聞いてドクターペッパーを飲んだ
彼の記憶が正しければ
ブライアンとは薬局で会い トムとは車の中で会った
彼はブライアンに聞いてみた
「そんなに目を細めて 前がぼやけないか?」
ブライアンは答えた
「ぼやければ誰でも綺麗に見えるんだよ」
彼はトムに聞いてみた
「ウイスキーでうがいでもしたのか?」
トムは答えた
「日に三度 忘れたことはねえよ」
彼はブライアンとトムにドクターペッパーと
不味そうな煙草を箱ごと渡して
面白そうな話を聞かせてくれと言いながら
頬杖をついて 天井を眺めていた
最初は楽しそうに聞いていたが
とても眠くなってしまったので
ブライアンよりも細い目になり
トムよりもしゃがれた声で 寝言を言っていた
目が覚めるとPCの画面いっぱいに
星空のようなものが映っていた
それをなぞると 指を追いかけて来る
彼は何だか そんな健気な光のせいで また眠くなってしまった