No.455 穴の開いた服
格好付けて着ていた服に穴が空いた
彼は残念そうにその服を眺めていた
繁華街はいつも騒いで狂って回った
銃声に一つ答えたのは犬だけだった
彼が誰のことも顧みなかったように
彼を知る者たちも彼を放っておいた
温かくなっていった穴を塞ぎ 笑った
彼は夜空に中指を立てながら死んだ
彼の服を脱がせた男はそれを持って
家の近くのコインランドリーに捨て
それを拾った浮浪者が彼の代わりに
格好付けながら夜道を歩いて行った
煙草をせがんだ時 浮浪者は殴られた
殴った金髪は 服を脱がせ持ち去った
金髪の彼女は服を見て不満そうだが
金髪は自分が逞しくなった気がした
服に飽きた金髪は そこらに脱ぎ捨て
それをサラリーマンが拾って帰った
スーツから着替えてみると 鏡の前で
銃を構えるポーズを繰り返していた